2011-01-01から1年間の記事一覧

街灯なき夜道

夜が更けて、車のヘッドライトが眩しく流れる高架道路のすぐ真横、高架下に続く細道には街灯がなかった。高架道路側の向かいには古い家々が並び、何軒かの曇りガラスのむこうで蛍光灯の明かりがぼうっと点いていた。帰路として避けられないこの道を、私はか…

横に座った人

夕方頃の電車は人もまばらで、窓から差し込む夕日がゆったり座る乗客たちを照らしていた。私は一番端の席に手すりに寄りかかるように座った。足元の暖房で全身が温められてくると、いつのまにか空白の眠気の中でまどろんでいた。隣に誰かが座ったと気がつい…

ゆずりあい

オフィスには観葉植物のパキラが2本ある。ある時、一方のパキラの中に個性の強そうな葉っぱが誕生してからだったろうか、水遣りの度に妙な感情になった。他の葉っぱがその個性の強い葉っぱに対しておびえているような気がしたのだ。まさかそんなわけあるまい…

濾過

パソコンに打ち込んでいった文章を、ためしに紙の上に落としていこうとすると、また別のリズムが生まれる。句読点を減らし、言葉そのものも削ってしまいたくなる。これを再びパソコンで打ち直して、また紙に落としてと繰り返したら、文章も、濾過された液体…

TPPについて思うこと(つづき)

前回の記事で、ISD条項が嫌、という話をしたのだけど、「そんなわけあるまい。たまたまNAFTAのがひどかっただけだから、そうならないように他国と連携して交渉すれば大丈夫さ」という意見を教えてもらって、他国と連携して回避できる道があるならちょっと安…

TPPについて思うこと

本当は、TPPに関する各論点を全体的にまとめて載せる予定だったのですが、知れば知るほど個人的にある思いが募ってきて、それを先に吐き出してしまいたいと思って、この記事を書きました。ただの漠然とした不安だったらいいな。TPPに関する議論は、「TPP参加…

TPP勉強会 ―アメリカの経済戦略について

先日、Green Media Cafeの仲間と『TPP亡国論』(著:中野剛志)をテキストにTPPについての勉強会を開きました。TPPは、もともとシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国で締結されていた自由貿易協定(通称「P4」)を環太平洋地域の諸国に拡…

Green Media Cafe

一昨年、NUMO(原子力発電環境整備機構)のCMがやたらと目につくようになり、同時に原発なしでは生活できないと思わせるようなテレビ番組も放送される時期があった。メディアが多様化したとはいえ、テレビの影響力がまだまだ大きい中、原発に関する偏った報…

「多忙は語るな。」について

今日は、おちまさとさんのブログ記事「多忙は語るな。」の以下の部分がとくにTumblrで拡散されていた。 忙しいと感じるということは その人間の許容量の少なさと 効率の悪さの象徴であり 決して自慢できるものではない。 そうかもしれない。だけど、たとえ「…

そうかも

なめくじは 走っているの かもしれず 伊藤園 新俳句対象 名作シリーズ38 第17回 一般の部B 大賞 近藤和子さん

猫を抱いて象と泳ぐ

猫を抱いて象と泳ぐ小川 洋子文藝春秋発売日:2009-01-09ブクログでレビューを見る»作者の生み出す想像の海を陶然として泳いでいくと、時折、避けがたく流れくる人の悪意というものにぶつかり、ハッとさせられる。それでもなお、純心と慈愛をもってチェス相…

美女と竹林

美女と竹林 (光文社文庫)森見 登美彦光文社発売日:2010-12-09ブクログでレビューを見る»いくらなんでもグダグダしすぎではないか!『きつねのはなし』の次に読んだからか、緊張感のひとかけらもなくぽけっとできました。通勤時に読めば、仕事中にもかかわら…

夜 (集英社文庫)橋本 治集英社発売日:2011-06-28ブクログでレビューを見る»妻子ある男が、ある日突然別の女のところに行って帰ってこなくなる。ほぼ同型のストーリーが、関係者ごとに主人公を変えて、輪を描くように綴られていく短編小説。どこかで現実にあ…

これだ!

自分がどんな時に幸せを感じているのか、この歳になってようやく把握できてきた。それは、身近な人達が、 その人の持つ個性を存分に発揮できているのを見た時であり、 そういう時はきまって、心の底から湧き上がってくる喜びで胸が一杯になり、 体中がとても…

震災後

大体同じ時期に三人称単数の-sを習い、 数2Bで四苦八苦して数3Cで白旗を振り、 モラトリアムのような文系大学生活を送り、 社会に出て働くうちに、友達がお嫁さんになりお母さんになり、 はて自分はどうして生きていこうかと考え始める、 ちょうど今頃同じ年…

聞く耳を持つ

前回の記事では、 どんな話でも一旦は受け止めることによって 初めて、相手が自分の話を聞く気持ちになってくれる、 という気づきについて書いた。しかし思い返せば、別に論破するつもりも毛頭なく、 ただ自分の意見を述べたに過ぎないにもかかわらず、 内容…

うけとめる

昨晩、母がテレビに出ている芸能人について 何か外見的なことでコメントしたのにたいして、 私は最初に疑問を投げた。 すると母は機嫌を損ねて「もう話さない」といった。他にも認識のズレによる衝突があったときに、 私が落ち着いて理由を説明しても母は不…

ぼくはぼくのえをかくよ

まっしろな紙に黒いクレヨンで横線が一本ひかれる。 まっしろな紙が黄色く塗られた。 黄色地に黒い線が一本走っている。空みたい! 海みたい! 大地みたい!という言葉から始まる、 荒井良二さんの絵本『ぼくはぼくのえをかくよ』。何もなかった夕方の空と海…

hitokakera

“わたしたちがもうたっぷり知っていると思っている物事の裏には、わたしたちが知らないことが同じくらいたくさん潜んでいるのだ。 理解というものは、つねに誤解の総体に過ぎない。 それが(ここだけの話だけれど)わたしのささやかな世界認識の方法である。…